教えてはかーせ

     教えて!博士!

 今日は休みで、友達の岳と神社へやってきた。三大稲荷大社の一つ、豊川稲荷だ。

 なんでも願い事があるらしく、ついてきて欲しいとのこと。あまり気乗りはしなかったけど、することがなかったから電車で向かうことにした。

「まもる、付き合わせてごめんな。」

「良いって、岳は、何を願いごとするの?」

「んーとな、うちの家商店しているんだけど、あまり繁盛していないみたいなんだ。だから、商売繁盛の神様のお稲荷さんに、お願いをしに行くんだ。」岳の家は、呉服屋で少し売れ行きが悪い。昔と違って着る人が少ないし値段も高い。

「そうなんだ、辛いね。僕もお願いして効果二倍だね!」

「まもるも願ってくれるのか!ありがとう。ちょっとトイレに行ってくるよ。」

「うん、いってらっしゃい。」

 電車が止まり、客が入ってきて、まもるの隣におじさんが座った。

 まもるは、おじさんを見て気づいた。


 この人、博士じゃね?

 

「は、博士?」

「あん‥?お、おお君は風邪引きボーイじゃないか。デートかね?」

「ちょ‥デートじゃないし友達と豊川稲荷に行くんです。あと僕はまもるって名前があるんです!」まもるは、頬を膨らませながら言った。

「すまんすまん。まもる君は豊川稲荷に行くんだね。んで、何しに行くんだい?」

「何しにって、願い事をしに行くんです。」

「ほっほう‥お稲荷さんの意味を知っているのかな?」

「お狐様ですよね?」

「フフフ、確かにお狐様だな。だが一歩間違えば恐ろしいことになりかねんぞ?」

「えっ!?どういうことですか?」まもるは驚いた。

「えーっとな、普通の神社はな、願い事ではなく誓いをするところだ。本堂の奥に鏡があって、自分を写し自分の中にいる神様に誓いをたてる。かがみ、か我み、我(自分)をとると神だ。」

「へぇー、じゃあお稲荷さんは何ですか?」

 博士は続けて言った。

「お稲荷さんはな、商売繁盛の神様で、願いを叶えてくれる場所だ。金持ちになりたい、有名になりたい等の願いをお稲荷さんが願いを食べてそうなるように動いてくれる。もし願いが叶ったら油揚げや清酒を持ってお礼参りをすること。もし、しなかったら‥。」

「し、しなかったら?」

「一家全員祟られる。」博士はニヤリと笑いまもるを見た。

 博士のにや顔を見てゾッとした。

「人だってそうだろう?人のために尽くしたのに、何の見返りもなしにしたら恨むだろう。それにな鳥居が沢山あるのは、他の動物霊がついて来れないようにするための鳥居だ。まあ結界みたいなものだろう。願いが叶ったらまた来てお礼するといい。叶わなくても、手を合わせてお礼を言うことを忘れずに。そんなところだな。」

「分かったよ。ありがとう博士。」

 博士の長話が終わると電車は終点の豊川稲荷へと着いた。丁度岳もトイレから出てきた。

 まもるたちは走って境内に行き、賽銭箱にお金を入れ願い事を願った。

「ふう、ありがとな。まもるがいてくれて良かったぜ。」

「いいよいいよ。帰りに何か食べて行こうね。」

 まもるはにこりと笑うと岳はなんだか照れた。

 

「「「彼女が欲しいです!可愛い女の子!彼女が欲しい!お願いします!!」」」

 

 博士が本堂に向けて叫んでいた。

 

「博士って、何歳なんだろう‥。」

 


 おわり    モグ海苔