何とも言えない落書き

      蕾の苗

 私は一体何をすれば良いのだろう、何を目標にして何を頑張ればいいのだろう‥。と考えて何も無い道の上で歩いていたらなにもないところでつまづいて転んでしまった。彼女の名前は、篠原 明美 大学卒業後就職活動もせずブラブラと歩いているのだ。

 

「痛っ!あー‥膝から血が出てるじゃん。後に残るし、最悪。」右膝を擦りむいて出血している。

「歩くと痛いけど、お金もないし家まで頑張って歩くかぁ。」痛みを我慢して明美は家までの道を歩いた。ふと公園が目についたので、水道水で傷口を洗うことにした明美は公園に入って行った。

 水道水の水は冷たく傷口に強く当たり、痛みが増していった。

「いったーい!もうなんでこんな目に合わなくちゃいけないのよ!ついてないわ〜。」

 すると公衆便所から男性が出てこちらに向かってきている。

「どうしました?」スーツ姿の男性はポケットからハンカチを出して聞いてきた。

「転んで足を怪我しちゃいまして。」

「これは、いけない。少しお待ち下さい。」

 男性は、鞄から消毒液を取り出した。

「少ししみますが、辛抱してくださいね。」

 男性は明美の傷口に向けて消毒液をかけた。

「うぅ‥。」

「痛いかもしれませんが、傷口を消毒しないと傷口にバイ菌が入り込み化膿することがあります。」消毒液が終わり絆創膏を取り出し、明美の足に絆創膏を貼った。

「これで大丈夫です。」

「ありがとうございます。なんだか痛みがひいたような気がします。」

「お役に立てて私も嬉しく思います。」男性はニコりと微笑んで立ち上がり、去って行った。

 明美は、男性に名前を聞こうとしたが、もう男性の姿は見えなかった。

(私もあーゆうこと、してみたいなぁ。人の役に立つような‥。)明美は奮い立ち家に帰って行った。

 怪我が治せる、薬の意味が分かって相手に説明できるような仕事がしたいと心で感じた明美は紙に書き出した。

「私のしたいことが出来た!でも最初はアルバイトからだよなぁ‥。」

 母親に話をしに行ったら、母親はニコっと笑ったあとにこう言った。

「あんたが、したいことをしたいと思った道に進みなさい。私は影で応援しているよ。」

「ありがとう、お母さん。また何かあったら相談しにいくね。」

 私は近所のドラッグストアにアルバイトを申し込みに行った。時給九百円に釣られたからではなく、新しい一歩と将来性を考えた末の行動だと考えた。面接はすぐ行われ、面接室へと通された。一般の面接室ではなく、お店のバックヤードの中の社内室だった。

「初めまして!ここの店を任されている上司の露川 充です!今日は宜しくね!」と意気揚々に話しかけてきた上司は茶髪で耳にピアスをしているチャラ男みたいな人だった。

(うっわー‥ここ大丈夫かなぁ‥。変なとこだったらすぐやめよ。)表情に出さず、明美も自己紹介と志望動機を語り出した。

「初めまして、篠原明美と申します。ドラッグストアで働くのは初めてだけど、人との繋がりを大切にした上で勉学に励み薬剤師になっていきたいと考えております!」よし、言えた。昨日の夜から一人で頑張って発声してたおかげだと心の中でガッツポーズをした明美だった。

「ふーん‥。アルバイトも初めてなんだね〜。ふんふん、よし!可愛いから採用しちゃおう!」グッドサインを出して笑顔で充は言い放った。

(はあ!?可愛いから採用されるのかよ。本当に大丈夫か?ここの店!)

「ねぇねぇ、明美ちゃん。」馴れ馴れしい態度で近くに寄る充は声を小さくして言った。

「今日ご飯奢るから食べに行かない?美味しいお店知っているんだよねぇ‥。」

「い、いえ‥結構です。まだお互いのことも知らないですし‥。」

「お互いのことは、ご飯の後でも‥。」

 その時だった!勢いよく扉が開き充は襟元を引っ張られ尻餅をついた。

「いってぇー!誰だよ、邪魔する奴は!」

「誰に向かって言っているのでしょうね。あれほど、ハメを外すなと念をおしましたが、どうやら減給されたいらしいですね‥。」充の前に現れたスーツ姿で丁寧な言葉を発する男性は腕を組みながら、まるで養豚場の豚を見るような目で見ている。

「本部長!こ、これは‥し、失礼しました!今日いらっしゃるなんて聞いていなかったものでして‥へへ。」充はアワアワしながら肩を震わしている。

「いないとこうもだらしがないのですね。明日から私が講師で講習を始めましょうか?充君?」ニヤリと笑う本部長はまさに鬼神のようだった。

「申し訳ありませんでした!明日から気持ちを切り替えて誠心誠意頑張ります!」深々と最敬礼をし充は職場へと急行した。

「おや?君は昨日の足を怪我した子じゃないですか。ふむふむ、明日からここで働くのですね。宜しくお願いしますね。」

「あの時はありがとうございました!あと、助けていただいてありがとうございます。凄く怖かったです。」

「また何かあれば、一声かけてくれれば対応しますので‥。おっと、申し遅れました。私の名前は、須藤 健太 ここの本部長をさせていただいております。では、仕事があるので失礼しますね。」

「あ、はい!宜しくお願いします!」

 明美は、社内室を須藤と出て帰ろうとすると、充が声をかけてきた。

明美さん、先程はすみませんでした。明日から宜しくお願いします。明日は午前十時開店ですので、朝九時に出勤してください。」と先程とは打って変わり大人しくなった充は、お辞儀をした。

 なんやかんや面接に受かった明美は明日に備えてベッドに潜り眠りにつくのであった。

 

 第一章  完